マーケティング方法の変化 
なぜB2B型企業はオンラインマーケティングが弱いのか

これまでのメルマガでは、新型コロナウィルスの影響のなかで、B2B企業のIT技術を活用したマーケティング&セールスおよびサービスの改善事例をご紹介しました。

ご紹介した応用の業務と企業はそれぞれ違うかも知れませんが、共通点として、IT技術を駆使したカスタマーコミュニケーション方法のイノベーションではないかと思われます。

そして、もう一つ特徴は、こういった技術や応用事例は、イノベーションといいながら、実は、斬新なものではなく、B2C型(対消費者)企業がすでに活用している方法なのです。 つまり、カスタマーコミュニケーションの面においては、B2B企業は遅れているとも言えるでしょう。

その原因の一つとして、「セキュリティ」というキーワードになると思います。特に最近では、「セキュリティ」を巡って、いろいろ話題になっています。しかし、「セキュリティ」という理由だけで、変化や新技術の取り入れを後回しすることは、「おのれを欺く」のではないかと感じてます。なぜならば、お客様でも、社員でも同じ人間で、日常生活は非常に便利なサービスを受けながら、仕事上は古いやり方のままで、何も変化がなければ、いつの間にか他社に追いつかれ、そして置いていかれるからです。

今回はB2B型企業のオンラインマーケッティングに関するテーマですが、まず、B2C型企業のオンラインマーケッティング及び、カスタマーコミュニケーション方法の変化を簡単にレビューし、それから、B2B型企業のオンラインマーケッティングに関する結論をまとめたいと思っております。

1.「人口紅利」

2011年1月、「Wechat」Appは誕生しました。もちろん、それ以外も色々良いAppがありますが、なぜ「Wechat」の誕生を特別に提起するかというと、「Wechat」の誕生とその後の発展は、庶民生活からオンラインビジネスまでとても大きな影響を及ぼしたからです。まずは、中国系、外資系製品を含めて、少なくとも10社以上のSNSサービスは日常生活から消えて(使わなくなって)しまいました。「メッセンジャー(MSN)」、「Skype」、「人人网」、「校友录」… 

そして、特に2012年から2016年の5年間は中国のネットビジネスの「人口紅利期」です(人口红利:スマートホンの普及、オンライン人口の急成長により、オンラインビジネス全体は急成長するということ、つまり、簡単にオンラインユーザーを獲得できるというニュアンスもある)。この時期はみんなお金でユーザーを買いますし、ユーザーの質より、量を重視してます。例えば、「wechat 红包」機能を使うだけで、何日間で数万人のユーザーを獲得することができます。また、面白い文書(コンテンツ)の1通だけで数万、数十万のアクセス数を獲得することができます。ある企業の実際のデーターによりますと、1ユーザーを取るコストは2元~3元です。つまり、200万~300万元の予算があれば、100万ユーザーを取ることができます。

この時期のマーケッティング手法は:金銭上の便益によるユーザーの獲得(例えば「wechat 红包」、抽選、など)、面白いコンテンツの配信、オンライン広告(例えば、リスティング広告、バナー広告など)などです。

2.私域Martech

しかし、2016年からその「人口紅利」は徐々になくなりました。同じくある企業の実際のデータによると、1ユーザーの獲得単価は200元から300元になり(前の100倍)、更にもっと高いかもしれません。ユーザーの取得コストはとても高くなったので、自社の顧客データベース(「私域」)の構築が重視されるようになりました。この「私域」とは、自社の顧客プールという意味で、「公域」、例えばTaobao、Baiduといった他社の顧客データを利用すること、と反対な考え方です。

そして、この時期、ユーザーの量より、ユーザーの質のほうが重視されます。つまり、獲得したユーザーはどこまで(売上)成果に繋がるかを重視されます。したがって、成果を測るためのデータ追跡、プロセス自動化、そして、成果を改善するためのワン・ツー・ワンマーケッティングといったIT技術(Martech=マーケッティング・テクノロジー)を重視するようになりました。「人口紅利期」で活用していたマーケッティング手法を使いながら、Martechも取り入れてます。自社の顧客資産を構築しながら、技術を使って、ユーザーから実績への転化方法も模索しています。

3.「刚需」と「高頻」

2018年以降、紅包の効果、リスティング広告の効果、特に、コンテンツマーケティングの効果はますますよわまっています。インターネット企業を始め、ユーザーにとって、「刚需」(必ず必要なもの)と「高頻」(高い頻度で利用するもの)を模索しています。

「刚需」と言えば、例えば、「蜂巢快递」はとても典型的な事例です。この会社は住宅地内に郵便物の保管ロッカーを無料で提供している会社です。特に、新型コロナウィルスの時、人に会うことはできないため、集中した場所に郵便物を預けることは安全で、宅配者にとっても効率の良いサービスです。 荷物が届いたらWECHATにアラートメッセージが届き、一時的な暗証番号が送られます。 便利性が認められて、もともと住宅地向けのサービスでしたが、オフィスビルまで拡大し急成長しました。 

この会社は本来、物流会社ですが、収益は物流ではなく、マーケティング・広告サービスです。預かった郵便物を取るため、「蜂巢快递」のWechat公式アカウントからの一時的な認証番号が必要です。そのため、公式アカウントを必ずフォローしなければなりません(必ず必要な「刚需」です)。これで、フォロワーをたくさん集めることができました。それにより、フォロワーに対して、広告的なコンテンツを一斉送信することができます。ユーザーがウザいと思ってもフォローの解除はできません。

この例のようなパターンはたくさんあります、例えば、「Luck in」コーヒーも同様です。①クーポン(「刚需」)を利用するため、公式アカウントをフォローしなければならない、②フォロワーをたくさん集めると、コーヒーと関連する商品の販売(コーヒカップ、朝食、デザートなど)はその後、展開してます。また、マックでも見たことがあると思いますが、①注文の時(「刚需」)、公式アカウントをフォロー、②フォロワーに対して、広告コンテンツを配信すること、などなどあります。

しかし、話は変わりますが、B2B型企業はどうでしょうか?

我々、100社以上の有名なB2B型企業を調べたところ、下記のような傾向がありました。①上述のようなマーケッティング視点を持って公式アカウントを運用する企業は15%(14社)しかない、②業界的には、製薬、医療機器、というような元々IT化の進んでいる企業の方が多い、③業務として、フターサービス(「刚需」)をWechat公式アカウントで行う企業は一番多く、その次は、在庫確認、物流状況の確認などです。

4.「ハッカー的成長」論

ここに言う「ハッカー」は、IT技術を利用して、セキュリティーとか社会の秩序を崩壊する意味ではありません。ハッカー的成長のポイントは、「成長」、企業の成長というものです。つまり、IT技術を活用し、企業の成長を加速するという意味です。そして、その革新的な技術やアディアは、巨大な投資も必要なければ、長期的な企画-実行のスパンも必要なしです。すなわち、小さな投資と迅速な改善活動で企業の成長を加速する、というのがハッカー的成長のことです。

その他、ハッカー的成長論は下記のような要素も必要となります、

① 製品・サービスの「Aha」ポイントの明確化

=ターゲッティング、つまり、自社製品がどういうお客様にどういう時にどういう問題を解決するかを明確化する。

② 成長の北極星の明確

つまり、成長の方向性を示す最も重要な焦点を定義する

③ カスタマ・ジャーニー(購買プロセス)の全般を成長の視点で管理すること

④ 迅速な実験-修正サイクルを実行する

・まとめ

以上、B2C型企業のオンラインマーケッティングの発展について、簡単にレビューしました。まとめますと、

① (オンライン人口が急成長のとき)、まずは、コンテンツマーケッティングやクーポン、「紅包」などの単一な手段を使って、フォロワー(=潜在顧客)を増やす

② IT技術Martechを活用し、ワンツーワンマーケッティングを展開する

③ そして、オンライン人口成長鈍化していくとともに、同業の競争も激しくなった時、顧客視点にシフトし、顧客にとって最も必要な(「刚需」)ものを模索する

④ 最後に、大きな広告などの投資を抑え、経済的かつ迅速な試行錯誤を行うことによって成長につながる、ということになります。

そうです我々が日々使っているB2C型の製品サービスは、たまたまこうやっているのではなく、仕組み的にオンラインマーケッティング行われています

B2B型企業への応用

最後に、今回のテーマに戻ります。B2B型企業はどんな状況でしょうか

公式アカウントで定期的に配信している企業ありますが、ただ、それだけでフロワー(潜在顧客)を集めることは、簡単には行かないです。

また、展示会などで景品を利用してWechatのフォロワーを集めようとする企業も多いですが、それだけでも簡単に効果につながらないです。なぜなら、今はコンテンツがいっぱい溢れている時代です、また展示会で景品を取るため、フォローしてもその後は解除することができます。

それでは、B2B型の企業はどうしたらいいでしょうか?

もちろん、コンテンツの配信や展示会でのアクションなどは不可欠ですが、もっと仕組み的にマーケッティングプランを立てるべきではないかと思われます。

マーケッティングアクションがどのような「成長」に結びつくかを明確に定義する必要があります。成果の明確性と定量化を決めた上で、下記の段階的なアクションをやってみましょう 

① 簡単に公式アカウントを開設して、運用してみる

② HPのよう製品サービスの紹介定期的に配信する

③ IT技術を使って、配信の結果、アクセス情報を収集し、分析する

④ 自社のコアサービス(小さな点でもよい)をWechatにてやってみる

⑤ データ分析で成長に結びつく北極星を明確にする

⑥ 成長チームを設立し、成長に結びつく仮設-検証のサイクルを迅速に繰り返して行う

⑦ 明らかに大きな成果に結びつく実験があれば、それを強化する

以上、一言でまとめますと、一番大事なのは「テスト、テスト、テスト」ではないかと思います。

現在の経済においては製品力、サービス力、営業力、価格などと共に、マーケティングという要素も以前からもそうですが、明らかに重要な一つになります。

長くなりましたが、お読み頂いた皆様にとって何かしらの参考になれば幸いです。

ありがとうございました。


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